こいずみ産地展を訪れる旅

2025.07.25

2024年6月に開催されたMeet up Furniture Asahikawa。会期中、北海道東川町に工場を構える家具メーカー大雪木工で、『こいずみ産地展』が開催されました。家具デザイナーの小泉誠さんと協働する家具メーカーを中心とした5社による、産地をつなぐ取り組みと、その一社である大雪木工の家具づくりについてお伝えします。

書き手:中村桃子(相羽建設・武蔵野美術大学小泉誠ゼミ卒)

■こいずみ産地展とは?

小泉さんが全国の製造メーカーとの協働を始めたのは30 年ほど前。各社とは製品をつくることよりも『つくりたい気持ち』をつくることを目標に掲げて、活動を続けてきました。そんなものづくりの『点』を『線』でつなぎ、誠実なものづくりに共感し合う全国のメーカー同士が一緒に伝え合うことで、共感の和を広げ『面』になることを目指す取り組みです。

■家具の産地東川と大雪木工の家具づくり

第一回のこいずみ産地展の会場となったのは、旭川空港から車で10分ほどの東川町『大雪山』の麓に位置する大雪木工です。明治時代に豊富な木材資源を活用した産業として家具づくりが東川町の主要産業へ発展。鉄道が整備され、全国から家具職人が集まるようになった家具の産地です。大雪木工は1983年創業の家具メーカーであり、社長の長谷川将慶さんも地域の木材・建材屋や家具屋、運送会社をしている家系で育ったうちの一人。棚物と言われる茶箪笥などの棚板がついた家具を中心に製作していた中で、バブル崩壊など家具業界を取り巻く時代の変化と共に、『家具をつくり続けること』にこだわりながら模索をしてきたといいます。

小泉さんと『大雪の大切プロジェクト』のものづくりを始めたのは2015年。それまで長谷川さんは、小泉さんの携わる家具の展示会や合同展示会に足繁く通い、小泉さんも大雪木工の工場を訪れる中で会社のことやものづくりの現状を共有。お互いを知る期間を2年ほど経た頃でした。「昔はつくる量にこだわっていたこともありましたが、マーケットの状況も変わり、ものづくりを続けていくにはどうしたら良いか、プロジェクトでの取り組みの中で模索してきました」と長谷川さん。初めは小泉さんと長谷川さんに加え、外部メンバーの平塚智恵美さん、村田一樹さん、畠山拓さん。そして、自ら手を挙げた数人のスタッフで活動をしていた『大雪の大切プロジェクト』。ものづくりで大切にする言葉・姿勢を共有するためのスローガンを決めたり、スタッフ全員で小泉さんを交えてジンギスカンを食べたり、集合写真を撮影したり、活動を続けていく中でじわじわと社内全体に伝わっていきました。

■ものづくりを素直に、誠実に表現する展示会

1年に1度『Meet up Furniture Asahikawa』のタイミングで展示会をすることが、大雪の大切プロジェクトのハレの日。何年も展示や活動を続ける中で『途中』というキーワードが見つかりました。「展示会は旭川の家具メーカーが新作を発表する場。その中で『途中』を展示することは挑戦でしたが、一生懸命やっていれば途中でも恥ずかしくないし、敢えて途中を展示したことが新たな試みになりました」と小泉さん。長谷川さんは、「展示会だから完成品を出さないといけないと焦って完成品に見えるような展示をしたり、以前は最終日に新作が出来上がって、その日だけ展示するようなことを平気でやっていたので、『途中でいいじゃない』と考えた時に気持ちが楽になりました。思い通りじゃない完成品を見せるよりは、思い通りの途中の方がいいじゃないかと気づいたんです」と当時を振り返ります。スタッフのものづくりへの想いや、ものづくりの途中を発表したり、箱が得意なメーカーとして、箱の可能性を探る中で生まれた家具を展示するなど、大雪木工の現在やものづくりへの想いを素直に表現しながら、毎年意気込みを持って発表を続けてきたといいます。

■初の合同展示会

8回目となる2024年の展示会で「ものづくりを伝えたい!」と想いを持った小泉さんと協働するつくり手の皆さんが各地から集い、初の合同展示として『こいずみ産地展』が開催されました。大雪木工は北海道産材センの木の家具シリーズを。宮城県登米市から参加した登米町森林組合は、地元の森で育った広葉樹の家具を。宮崎県都城市のクワハタは、小泉さんと約30年つくり続けている、宮崎県産材をつかったTETSUBOシリーズの家具を。広島県府中市の若葉家具は16年に渡る小泉さんとの協働で展開してきた家具をそれぞれ展示。各ブースにはフォームレディのキッチン用品や生活道具がしつらえてあり、家具を使う暮らしの風景を連想させ、箸置きから建築まで幅広い製品をデザインしている小泉さんならではの展示だと感じました。

『こいずみ産地』という言葉には、じつは『こいずみさん家』という言葉がかけられています。大雪木工と同じく小泉さんとの協働の中でものづくりへの意気込みを持った、まるで同志や家族のようなつくり手のみなさん。長谷川さんは「初めてお会いする方でも、小泉さんという共通項を持っているので自然にアットホームな雰囲気ができました」と語ります。それぞれの職人の技術や、地域の魅力を活かした小泉さんのデザインに、つくることで答える。まさにつくり手のチームです。

■次の『こいずみ産地展』

大雪木工の突板倉庫で2024年にはじまった「こいずみ産地展」。小泉さんが全国各地で取り組んできたものづくりがつながり、それぞれの産地らしさを活かした合同展示を開催する取り組みへ発展していきます。第二回となるこいずみ産地展は2026年1月14日(水)〜15日(木)にて開催されることが決定。会場は、北海道からグッと南下した福岡県大川市。日本最大の家具の産地である大川で、慶応三年から代々家具屋を営む丸徳家具店が会場となります。五代目の佐藤夫妻と小泉さんは椅子づくりの現場で出会い、2016 年には小泉さんの設計によって店舗が生まれ変わりました。今回の展示では店内の家具を一掃して、全ての空間を「こいずみ産地展」の家具のみで新たな空間構成を行う予定です。家具づくりのトークセッションや、共同展示会ならではの企画も準備中ですのでご期待ください。

こいずみ産地展が開催された大雪木工の突板倉庫
大雪木工の家具で構成された事務所空間
事務所の2階はショールーム
大雪木工の家具づくりの過程は主に7つ
合板と突板の製作・木取り・加工・研磨・塗装・組み立て・検品・梱包
写真は木取りの様子
工場を案内してくださった長谷川社長
大雪木工スタッフと大雪の大切プロジェクトメンバーの皆さん
突板倉庫での『こいずみ産地展』
大雪木工|家具の素材としては珍しいセンノキの製品
製品開発にあたり社内からさまざまな意見が出て、
これが欲しい!という思いでつくる大切さを改めて感じたという
若葉家具|広島県府中市を拠点とする若葉家具は9割が小泉さんデザインの製品
移動しやすいコンパクトで軽いソファや、カラーバリエーション豊富なスツールが魅力
登米町森林組合|山を育てる森林組合が、自ら伐採・製材した登米産の広葉樹用いてつくる家具シリーズkitakami
100年の歴史を持つ秋田木工の技術を用いて曲木椅子を製作
クワハタ|小泉さんと30年近くものづくりをするクワハタ
遊具を製作している鉄工所との協働の中で生まれたTETUBOシリーズが人気
イベント期間中は家具のほかにも
フォームレディーのキッチン製品をディスプレイ