「坐る」と「座る」

2024.02.14

「椅子」とは、道具が生まれた後から付いた名前で、いわゆる名詞。常々「動詞でデザインをするべきだ!」と言いふらしているので、「すわる」という動詞から道具の形を考えてきた。この「すわる」は元々「坐る」で、字を見てのとおり、人と人が土の上に佇むことが原点。その後、「坐る」場所に屋根「广」がつき「座る」となった。なので「座る」は室内に佇むことを意味し、椅子、スツール、座布団のように固定観念にとらわれた形を思い浮かべてしまう。かたや「坐る」でイメージすると、人の行動行為に素直に向き合え、手摺、縁石、岩、ブランコ、など、ふと腰掛けている場所を思い出す。家の中でも、階段、窓枠、上がり框と、腰掛けられる段差が見つかり、この段差を見つめ直すことで、素直な居場所が見つけられる。

新建ハウジングプラスワン2019年3月号
連載「家+具|23」小泉誠

「西浦の家」窓ベンチ
竣工:2018年
施工:空間工房ロハス
つむじ「舎庫」の小上がり
竣工: 2015年
施工:相羽建設