デザイン教育って?

2024.07.14

美大に行く気もないのでもちろん行けず、木工学校しか出ていない家具デザイナーが、長年美大でデザインを教えている。建築などは国家資格のため構造や法規など学ぶ事が明確だが、デザイナーになるには資格もなく、なにを教えたらいいのか迷うところ。そんな迷いを一蹴してくれたのが、美大に誘ってくださったインテリアデザイナーの巨匠、杉本貴志さんの一言。「つべこべ言わず、おまえの生き様を伝えろ!」で目が覚めた。デザイン教育とは、恋愛を教えるのと同じで、方法を教える事が出来ない。簡単に言うと、モテるためには自分が魅力的で強い人にならなくてはいけないので、スキルやノウハウではなく、人間としての強度を上げる事が肝心。

 ということで小泉ゼミでは自分が生業にしている、デザイン領域については一切触れずに教えてみようと心に決めた。日々の仕事を題材に教えると、つまらぬところが気になり本質に辿り着かない。そんなこんなで、環境とは?人格とは?構造とは?心意気とは?とか、原理原則を学べるゼミ活動を続けている。

 空間デザインを志して美大に来た学生達も、小泉ゼミ出身者になると、クラフト作家、アーティスト、漫画家、広告代理店、職業訓練校、小料理屋、デザイナー、家具屋、芸大進学、住設メーカー、絵画教室、お母さん、と様々な場所に嫁ぎ、その巾の広さに驚き、感心し、嬉しく思う。なにはともあれ、デザインを知るにはデザインなんてちっぽけな枠で捉えちゃいけないんだなとつくづく思うのである。

新建ハウジングプラスワン2019年11月号
連載「家+具|30」小泉誠

学生達の椅子の模型。荷重に耐える強度があるかどうかチェックすると……