仁義なき商品

2023.04.16

短歌の本歌取り、工芸の写し、琳派など、日本では過去の表現を引用する手法が行われてきた。これは先人の表現を敬い、その力を礎に新たな表現を生み「過去+今=文化」となる歴史や進化を育む尊い手法。ところが近年では、安易な模倣行為が横行し、家具業界ではジェネリック家具といって版権の切れたデザイナー家具を堂々と売っている。これは、ジェネリック薬品と同じで「ユーザーの為に、同じ性能で、安価で、手頃に使ってもらえる」という論理だが、薬は命を守る役目があるが、デザイナー家具をジェネリックという意味が分からない。まずは、版権は切れているものの、デザイナーの名前と形を使っているのだから、人としてデザイナーに仁義を切らなくていいの?と思う。仁義も切らずに「ユーザーのため」と大声をだしているが、あからさまに「金のため」というのが見え見え。それでも売れるのはユーザーにも問題がある!

 大工が家具をつくる活動「大工の手」では、各々が誠実に役目を担う「分業」という理念がある。この分業は、つくる人(大工)、伝える人(工務店)、考える人(デザイナー)、そして、使う人(ユーザー)が一体となって成り立ち、その結果「過去+今=文化」になるという仕組。なにはともあれ、模倣は「売れている」ものを真似して、簡単に成果を得ようとする事がカチンとくる。だから、売れにくい小泉製品の模倣が出てこない……。ということも少し残念。

新建ハウジングプラスワン2017年9月号
連載「家+具|6」小泉誠

折り紙の手法を引用して、折る形で構成されたORI stool
photo : Hiroyuki Shinohara
2ヶ月毎に通う、2000年からつづくワークショップ
メーカーとデザイナーの心ある関係
宮崎椅子製作所(徳島)
フォーリサローネ出展2016
宮崎椅子製作所の心意気を世界に伝える
会場づくりもメーカーとデザイナーが現地で協働