「動詞」で場をつくる

2023.05.15

家具屋さんの売場では「椅子」「机」「テーブル」「箪笥」など、アイテムごとに編集して家具が分かりやすく売られている。そのため家具メーカーの商品づくりも、家具の名前のついたアイテムを開発し続けている。本来、道具づくりは「名詞」ではなく「動詞」でデザインするべきなのですが…。

先日、徳島県立近代美術館のエントランスホールの環境を、家具を置くだけで計画してみた。大理石の真っ白な硬い空間に、杉の板で作った家具は「座る」「仕舞う」「寛ぐ」「仕切る」「関わる」「学ぶ」「見せる」など多くの動詞を拾いだして形にしてみた。

「寛ぐ」ソファとそのための書庫として「仕舞う」棚を合わせ、その家具で空間を「仕切」り、「座る」ことと「関わり」を考えて大きな縁台が出来あがった。そして家具の張地は美術館の収蔵絵画からピカソとクレーの色味を使った絵画ソファになり、製作は地元のセイコーハウジングと山田工務店と、この場所だからこその関係が繋がる事で、ここでしかないオンリーワンの環境が生まれている。

新建ハウジングプラスワン2018年1月・2月号
連載「家+具|10」小泉誠

徳島県立近大美術館のエントランスホールの「大工の手」
2017
パウル・クレー「子供と伯母」のオマージュ
パブロ・ピカソ「ドラ・マールの肖像」のオマージュ
家具製作:わざわ座、セイコーハウジング+山田工務店
KM .49 / ita-majikiri sofa
KM .67 / mabashira-magazine stand A4