民藝のことば
2023.08.14
「これって、民藝っぽいね」なんて言葉を耳にする。かくゆう僕自身も若い頃には「民藝はダサい」と思い込んでいたが、デザインを生業にして地域を巡り人の技や心意気に触れて、あらためて民藝を知ると、民藝運動の創設者のひとり柳宗悦さんが残した民藝の9つの言葉が染み入ります。
1. 実用性 使うための道具
2. 無銘性 作家ではなく、職人がつくる
3. 複数性 ある程度の数をつくれる
4. 廉価性 皆が買い求められる
5. 労働性 熟練した技術をともなう
6. 地方性 その地域らしい、素材や技術を活かす
7. 分業性 複数の手で協力し合ってつくる
8. 伝統性 先人の技や知識の積み重ねで守られている
9. 他力性 風土や伝統など、目に見えない力に支えられている
これを、デザインの言葉として見てみると、誠実なデザインの姿が見えてくる。同時に今のデザインがいかに不健康かも見えてくる。民藝とは姿形ではなく、健康的なものづくりの環境を唱えた理念なのだ。明治以降の西洋化で、使わなくなった道具ができ、つくる手も止まり、その社会状況に向かい合い、手仕事の復権を目指したのが民藝運動だった。
高度経済成長期の余波で「売る」ことが目的となった今、つくる喜び、使う喜びをめざし、健康的な手仕事のきっかけを模索している活動が「大工の手」です。現代の民藝運動を目指して地道に活動中です。
新建ハウジングプラスワン2018年5月号
連載「家+具|13」小泉誠
大工の手仕事と誠実な素材でつくられる「大工の手」