途中が大事

2023.10.14

旭川の家具メーカーと関わり3年が経つ。通常、家具メーカーとデザイナーが出会うと製品を作ることが目的になるが、ここでは製品を作る前の「つくり続けたい気持ち」を育む活動を続けている。今年の活動は「自分たちを伝える」ことで、この工場の特徴である、突板を板に貼る「化粧貼り」に目を向けた。突板を貼れるのであれば、いろんなものが貼れるはず! ということで工場スタッフと共に素材を探して貼ってみた。はき古しのデニムは自分の思い出とともに板に貼られ、ポケットが活かされたポケット付きの扉ができる。アルミホイルもシワクチャに貼られ一見失敗と思われるが、そのシワ加減が美しい。大きな葉っぱはプレス時の熱で変色し、時間の経過で異臭がしてきて最後はカサカサだが、情緒的で美しい。製品開発が目的だと、このような実験はできないが、自分たちの心意気を探す活動だからこそ出来上がった17種類の板は、美しいアートワークに仕上がった。製品化という目的に近道するより、寄り道した「途中」を大事にすることが、強い気持ちを生み、持続するものをつくる秘訣なんだと思う。

新建ハウジングプラスワン2018年8月号
連載「家+具|16」小泉誠

2018年に大雪木工の突板倉庫で行われた化粧貼りの展示会。
デニムを面材として家具に使用。
洋服のポケットが活かされた扉。
ふわりと突板が舞う作業風景。