誠実な素材
2023.12.14
「誠実」という言葉を声に出せば出すほど不誠実に感じる。それも、デザイナーや工務店という、元々うさん臭いと思われている立場で言う訳ですから、なおさら怪しい。そんな中、大工が家具をつくる活動「大工の手」では誠実な素材を使うという理念がある。「誠実な素材って?」と聞かれると、地域材、現場やプレカット時の端材、家の古材、と様々ですが、使い手に対して「説明ができる素材」と答えています。説明をするためには、素材を知り納得しないといけないので事前の勉強や研究も必要。そんな些細な気持ちを持つことで、うさん臭いデザイナーや工務店が「誠実な素材」のおかげで信用される機会になるはずだと思い、この活動を続けている。そして、誠実な素材の向こう側には、素材をつくる人もいる。林業や素材メーカーでも誠実に素材に向き合う方々を目にする。「大工の手」は、そんな人達と使い手を繋げることも目的のひとつ。使い手と一緒に素材を見に行き、土を知り山を知る、木を知り森を知る。そんな視野の広い活動にしたいと思います。
新建ハウジングプラスワン2018年11月号
連載「家+具|19」小泉誠
構造材のプレカットや現場工事の端材を「誠実な素材」として活用