自然の形

2024.01.14

建築とは自然の中に人工物を建てる仕事なので、その関係に責任を持たなくてはいけない。幾度か訪れた桂離宮では、人工物を作っているという強い自覚を感じ、建物と自然の境界に必要以上に手数をかけている。そんな「人工」と「自然」ってどんな形かとイメージすると、多くの人は人工の建物は四角で硬く、自然は有機的で柔らかな印象を思い浮かべる。桂離宮もまさにそんな強弱の関係が美しい。

数年前に、陶芸家の自宅に伺った時、棚の上に四角が二つ組み合わさった構成的なオブジェを目にした。その作家の作品かと聞いたところ、自然界の鉱石と聞き驚いた。「黄鉄鉱」というもので、結晶の形がそのままカタチになっている。確かに塩や雪の結晶も幾何学形態の組み合わせだ。そんなことを思うと、自然界の原子の形は幾何形態が多いことに気づき、我々が作っている建築という幾何形態が儚く見えてくる…。最近よくみかける「自然の形をモチーフにして有機的に優しく」なんていうデザインも、形の上澄みしか見てない儚いデザインだなー、と思ってしまう。そして、建築という形も自然の原子形態に負けないよう、頑張らなくてはいけないと思う次第です。

新建ハウジングプラスワン2018年12月号
連載「家+具|20」小泉誠